
正座して静かに庭を眺めてみると、
目の前に広がるのは、石と白砂で描かれた水面のような景色。 水も音もないのに、ここには漂うような静けさが潤っている。
この庭は、ただ美しいだけではなく、 しらずしらずと心を導くような力を持っている。
ここに座ると、歩んで海を旅するように、 自分の入るべき場所を見つけられそうな気持ちになる。

苔に覆われた築山(つきやま)は、柔らかな丘のように連なり、
そこに立つ石たちは、海を渡る島影を思わせる。
重森三玲らしく、立石が多い。
石はただ立てるのではない。
角度、向き、重心を見極め、ひとつずつ呼吸を合わせるように据える。
生きた石が、苔の丘にリズムを生み、白砂の波にそびえて見える。

中央奥に見えるのが、三尊石。
釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来――仏法で尊ばれる三つの仏をかたどっている。
この三石の組み合わせは、今でも日本庭園の基本のかたちになっている。
苔に包まれた築山に、静かに、しかし確かに立つ石たち。
自然と調和しながら、仏の存在をそっと伝えている。
さらにその背後には、刈り込まれたツツジが雲を表し、
仏の世界に立ち込める雲海の景色を想わせる。
苔の美しさもまた、この庭の呼吸のひとつだ。

苔に包まれた築山が、静かに波打つ大地をつくり、
その上に、重森三玲らしい力強い立石が、島々のように散りばめられている。
白砂の上には、丁寧に描かれた波紋が広がり、
水はないが、砂紋の表現によって潮の満ち引きを感じさせる。
石と苔と砂――すべてが呼吸を合わせるように、ひとつの世界を織りなしている。
仏法の世界を静かに映しながら、
この苑は今もなお生き続けている。
苑全体の空気感や細部の美しさは、
詳しくはYouTubeでじっくりご覧ください。
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